星の欠片に願う夜

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「ここは……」 「アキラさん、この場所をご存知でしょう?」   青い空と、遥か高くに沸き立つ入道雲。 その入道雲を真横に突っ切るように伸びる、一本の飛行機雲。 そして、辺り一面の、ひまわり畑だ。   地面を覆いつくすほどのひまわりが、太陽に向かって背伸びをするように。 「母さんの、写真」   立ち尽くす僕に、奈緒さんはポシェットから写真を一枚手渡す。 「どうしてこれを奈緒さんが。これは、僕の財布にいつも入れていたはずです」 「これはアキラさんの遺品から、私が引き取ったものだから」 目を細める奈緒さんに、僕は固まったまま「イ、ヒ、ン」と、手元の写真に視線を落とす。   僕が財布に入れているものよりも少し色褪せた写真。 ひまわりのなか、父さんが向けるカメラに笑う母の写真。   僕が、唯一「母さん」と呼びかけられる大切なもの。 「ここは、その写真が撮られた場所です。当時はきちんと道も整備されていて、流石にこんなに泥んこにはならなかったようですけれど」   ふふっ、と肩を揺らしながらスカートの泥を払い、手をハンカチで拭った。 「アキラさんは、ここを探していたんでしょう?」   思わず顔を上げる。目の前で、奈緒さんが優しく微笑んだ。 少しあどけなさの残る、大人の女性の姿。 「あ、あの奈緒さん、さっきから何を――」   さあっと、僕と奈緒さんの間を風が駆け抜ける。 ひまわりたちが一斉に頭をふるふると揺らし、同時に懐かしい香りが僕のなかに眠っていた記憶を呼び覚まし、無意識にふらふらとひまわりのなかを進んでいた。
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