星の欠片に願う夜

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「お二人とも、アキラさんのお葬式に出てくれました。最初は、自分たちの顔なんて見たくも無いだろうって仰っていたんですが、お父様がお二人の謝罪を聞いて、参列してほしいと頼んだんです」 「そんな……」 「お父様からの留守番電話、聞いてみてください」   橘と柏木のメッセージを見た僕の指先は、留守番電話の再生ボタンを前に震えていた。ごくり、と唾を飲み込んで、指先に力を込めた。 「アキラ、どこにいる。なぁ、その――」   言い澱んで沈黙が流れる。 「再婚の事、ちゃんと話をしなくて悪かった。なぁアキラ。明日、一緒に釣りに行こう。中学一年の夏休みが最後だったろ。だから帰って来い」  父さん――。 相変わらずの愛想の無い、懐かしい声。 ごめん、もう一緒には行けないんだ。 父さんと釣りに行く事も。父さんの料理を食べるのも。   死んだ僕には、もう二度と叶わない日々。   胸の奥に湧き出すとてつもない後悔の念が、胸を詰まらせる。 「奈緒さんはどうしてそんなに僕の事を知ってるんですか」   泣き出しそうになるのを押し殺して、出来るだけ平静を装って訊ねた。   潮の香りが、太陽と緑の匂いと入り混じる。あたたかくて、優しくて。 「あっ――」   さっき出て来た木のトンネルの傍で、人間の姿のミミちゃんと、アカネさんが並んでこちらを見ていた。 「どうしました?」 「いえ……」 「奈緒はお前が死んだ場所に来ては、いつも泣いていたよ。自分がもっとしっかりしていればって。声を掛けていればって」    アカネさんの憂いを帯びた寂し気な声は、風に乗って僕に届く。 「お姉ちゃんは、ずっとここで待ってたんだよ。きゅうりの馬も、茄子の牛も、亡くなった人がこの世に戻って来られるように願うものだから毎年作ってた。随分時間が掛かったけどね」   アカネさんの隣で、人間の姿のミミちゃんが悲しそうに微笑んだ。
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