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そればかりか、インスタントカメラで撮った学生服の少女が、顔を隠してこれと同じものを着用した写真までご丁寧に入っている。
まさか、と良く見れば、タグは薄くぼやけているではないか。
「嫌だ、汚らわしい……っ!!」
蝶子はすぐに眼前のドアを一心不乱に叩き、ノブを乱暴に回したが、反応はない。
いつもなら施錠などしない恋人なのだ。
「許さない、許さないわ……」
こんな厭らしい物を購入して自分に渡すだなんて、しかもきっと中には誰か女がいる。だから自分は入れて貰えないのだ。
仕方なく夜になるまで待った。
七時間ほど待った。
相手の部屋の間取り、物の位置は本命の女である自分が一番に理解している。
そんなことを考えながら、二箱目の煙草に火を着けようとした時。
かちゃり、とノブが回り、「またね」なんて媚びた声が。やはりね、と蝶子がこじ開け無理矢理に中へと押し入った。
ささやかな玄関のすぐ横にはキッチン。
一緒に食事などしたのだろう。
作りっぱなしのまま、汚れたまな板の上に包丁が投げてある。
「頭の悪そうな女、勝手にキッチンなんて使いやがって!!」
すぐに甲高い悲鳴と、ドスの効いた怒号。関係ない。
こんなに尽くして良くしてあげたのに。
と、蝶子は歯を食いしばり、勢いをつけて恋人の胸へと飛び込んだ。
「痛ぇ……っ、このくそ女」
ぐっ、と凄い握力で腕を掴まれ、膝を折り曲げてから前に突き出すような蹴りと同時に、勢いよく後ろへすっ転んだ。
まともに喰らった蝶子はシンク下、観音開きの収納扉に派手な音を立てて背中からぶつかり、茶碗やら箸やらがその衝撃で横に落ちる。
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