黒い思惑

1/5
757人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ

黒い思惑

「新プロジェクトの方は、どうなってるんですか? 船が沈むどころか、着実に実績を積んでいってるじゃないですか」  専務室のソファに腰をかけながら、朔人がいら立った声を出す。 「さ、朔人くん。落ち着いて。こっちも面倒な案件が出て来て、困っているんだよ……」  専務は媚びるような目で朔人を見ながら、取り繕うように説明した。 「面倒な案件って?」 「ま、まぁそれは……。とりあえず相馬くんに、逐一状況を報告するようには伝えてるから」  専務の言葉に朔人はチッと舌打ちを打つ。 「その相馬部長。本当に信用できるんですか?! 最近じゃあ、副社長室に入りびたりだって言うじゃないですか!」  朔人はさらに荒々しい声を上げた。 「そ、それは……」 「これから、お父さんの所に行ってきます」  朔人はガタンと音を立てながら立ち上がり、専務の顔も見ずに部屋を後にする。  足音はだんだんと小さくなっていった。 「クソガキが……」  専務はデスクの上にあった書類を掴むと、閉じられた扉に向かって投げつけた。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!