SNSのひと

6/6
前へ
/435ページ
次へ
 息を切らしながら、遊歩道を駆け足で登る。  さっきまで美琴が掴まっていた、木の根っこが飛び出した崖の横を通り過ぎ、はぁはぁと肩で息をしながら坂道を登りきる。  すると突然、開けたようにあの写真の景色が目の前に広がった。 「そうだ。この色に目を奪われて足を滑らせたんだった……」  滝から勢いよく流れ落ちる水は飛沫(しぶき)をあげ、辺りには白く細かい泡が広がっている。  その下には、まるで宝石でも隠しているのかと思うほど鮮やかな、コバルトブルーの色が揺れて輝いていた。  美琴は目を凝らして、何度も周囲を見回した。  風で高い木の葉が揺れて、影がちらちらと動いている。  誰かがいる気配がして、美琴は慌てて振り返る。  でも、そこには誰もいなかった。 「はぁぁぁ……」  美琴は深くため息をつき、その場にへたり込む。 「もしかしたら……もしかしたらいたのかも知れない。私を助けてくれた人の中に、あの人が……」  ざぁざぁと落ちる滝の音が、いつまでも耳の奥で響いていた。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

798人が本棚に入れています
本棚に追加