アオハルは上ったり下りたり

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卒業式まで2週間。 私は昼休みに楽譜を片手に体育館に向かう。 「はい、全員揃ったわね。じゃあ、今から、卒業式の伴奏のオーディションを行います。誰から弾く? 誰からでもいいわよ」 音楽の水野先生がいつもの明るくよく通る声で話す。 ここにいる私たち5人は、在校生が歌う合唱曲のピアノ伴奏に立候補してる中学2年生のメンバー。 私以外の4人は、ピアノを習ってはいるものの、小学校の時からオーディションに落ちて全く伴奏させてもらえなくて悔しい思いをしてた人たち。 けれど、中学に入ると、小学校で伴奏してた人たちが、部活や学業を優先するために立候補しなくなったお陰で、合唱コンクールなどでクラスの伴奏を任せてもらえるようになった。 つまり、ピアノを弾けるけど、特別上手なわけじゃない。 一方、私は、小学校の頃からずっと伴奏してきた。 でも、実は2月にピアノのコンクールがあり、そこで選ばれると4月にさらに上の大会があるため、卒業式や6年生を送る会などでの伴奏は、練習時間がなかなか取れなくて辛かった。 だから、中学に入り、私も伴奏に立候補するのはやめた。 やめたのに、私が所属する吹奏楽部顧問の水野先生から、 「佳音、伴奏やるよね? もちろんやるよね?」 と半ば脅しとも取れるような口調でオーディション参加を強要された。 今回の合唱曲は、間奏で流れる綺麗なピアノの旋律も聴かせどころのひとつ。 だから、どうしても私に弾いてほしいんだそうだ。 そこまで言われたら、弾かないわけにはいかない。 だから、私は勉強時間を削ってまで練習してきた。 いや、これ、先生としてどうなの!?って思わなくもないけど。 そして、オーディションの結果、私が伴奏者に決まった。
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