アオハルは上ったり下りたり

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私と玲音とは生まれた頃からの幼馴染み。 私の母と玲音のお母さんが高校生の頃からの親友で、お互いの家を行ったり来たりして育って来た。 うちが分譲住宅を買うことに決めたら、玲音のお母さんが、 「うちもそろそろ家を探さなきゃって言ってたの」 と言って、同じ地区の分譲住宅を買い、家族ぐるみで、仲良く同じ幼稚園から中学まで過ごして来た。 そんな私がピアノを習い始めたのは、元々、玲音のお母さんが、玲音にピアノをやらせたくて、うちの母を誘い、同じ音楽教室へと通い始めたのがきっかけだった。 だから、2人で一緒に習い始めて、もう10年以上になる。 ところが、玲音は、私より上手いのに、なぜか学校ではピアノを弾こうとしない。 合唱の伴奏にも、一度も立候補したことがない。 どうやら、男がピアノなんてカッコ悪いと思ってるみたい。 全然そんなことないのに。 アユに呼ばれて気づいた玲音は、そこに自転車を停めると、堤防の斜面を駆け降りて来た。 「佳音! どうした? 立てるか?」 私が小さくうなずくと、玲音はすぐそばにしゃがみ込み、私の左腕を肩に掛け、右脇に手を入れて立たせてくれた。 「とりあえず、上まで上がるぞ?」 私は、玲音に支えられながら、斜面をゆっくりと上る。 「じゃ、俺、自転車取ってくるから、アユ、佳音を頼んだ」 玲音は私の腕をくぐるように肩から外すと、再び、斜面を降りて行く。 アユは、サブバッグからティッシュを取り出すと、服や体に付いた草や泥を払ってくれる。 「あぁ、やっぱり濡れてないとダメだね。全然落ちない」 でも、足の擦り傷は血が滲んで広範囲に広がってはいるものの、傷は浅く、大したことはなさそう。 問題は…… 私は、アユにされるがままになりながら、そっとさっき激痛の走った右手を動かしてみる。 っ! 痛みが走るだけで全く動かない。 自転車を引き上げて来た玲音が、その様子に気づいた。 「佳音! 右手か?」 自転車を停めると、そっと私の右手に触れる。 「っ!」 玲音が少し触って動かすだけで痛い。 「すぐ病院に行け。二次まで1ヶ月しかないんだぞ! もし、骨折してたら、間に合うかどうか……」 今年は、玲音と一緒に楽器店大会で受賞して、二次選考へ進む。
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