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「どうしてお前が『王の騎士』に選ばれる?」
「あれだけの失態を犯しておいて!」
「そうだ!騎士の位を剥奪されてもおかしくない」
兵舎の庭で怒号が上がる。ウゾルク騎士団の新兵は暫く王城に滞在し訓練を行う。その後、遠方の領にて治安維持に務めるのだ。王都に留まる者の方が少なかった。
昔は王の近辺を守るのも、騎士の人数が一番多かったのもウゾルク騎士団だったが今は見る影もない。
イノーク達は目を吊り上げてフェルに突っかかって来た。胸倉を掴まれそうになったフェルは後退り、イノークと距離を取る。
(面倒なことになった)
フェルは舌打ちをした。なんと答えてもイノーク達は納得しないのは分かり切っている。隣にいたデュランが心配そうにフェルの様子を伺う。
「私が『正義の剣』に選ばれたからだ」
「どうして……」
イノークは悔しそうに顔を歪ませた。
「どうしていつもお前なんだ?どうしてお前が選ばれる?フェル、お前は特別な存在なんかじゃない。ウゾルクの誇りも、神と王への忠誠をも持ち合わせていない、ただのクズだ」
「イノーク!言いすぎだ!それ以上フェルを貶すようなら……さすがの俺も許さない」
デュランがフェルを庇うように前に進み出る。いつも穏やかデュランが険しい表情を浮かべていた。イノーク達はその迫力に息を呑む。
ウゾルクでデュランは評判の少年だった。人が良く、いつもフェルの味方をする。その上剣の腕はフェルの次に強いからイノーク達は頭が上がらないのだ。
強くて正義感が強い。誰がどう見ても『正義の剣』の所持者に相応しい人物だった。人を信用せず、優しささえ振り払う。復讐心に燃えるフェルとは正反対だ。
(そうだ。私は……ただのクズだ。正義の剣にも、王にも選ばれる資格の無い者。だったらどうして周りの奴らは私を選ぶ?どうして……)
「選ばれる理由なんて……私が知りたい」
フェルの呟きにイノークの怒りが頂点に達する。
「何だよそれ……。そう言うところがムカつくんだよ!何の苦労もなく手に入れたってか?」
イノークは剣を鞘から引き抜くとフェルとデュランに向けた。
「剣を取れ、フェル!昨夜は邪魔が入ったけどな」
「城内での私闘は禁止だと昨日言っていただろう?」
デュランの言葉にイノークは不敵に笑った。
「これは稽古だ。ただし村にいた時のようなお遊びじゃない」
「……」
「ここで悪神イノスを打ち払ってやる!」
フェルは大きなため息を吐くとデュランより前に進み出た。むしゃくしゃした気持ちを抑えるのにイノークを叩きのめすのも悪くないと考えたのだ。
「……フェル!」
「仕方ない……やるよ。やってあんたらが静かになるなら喜んでね。だけど私も手加減はしない」
フェルは水色の瞳を閃かせた。
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