#1 合コンの誘い

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#1 合コンの誘い

 私は大学2年生になって、初めての合コンで初めてのお酒を口にした。ビールは苦くて受け付けなかったが、何とかサワーというお酒は口当たりが良く、何杯もお替りしていた。その内に酔いが廻ってきて、意識が遠退(とおの)いていくのが分かった。 高校からの友人の浅田芽美(めぐみ)に誘われた合コンは、横浜港南大学の男子5人と、私の通う白桃女子学院大学の女子5人が集っていた。お互いに自己紹介をし、男子が席を回転ずしのように巡って来て会話を交わした。生まれてこの方、男子と面と向かって話した経験がなく、ましてや交際した事もない私だったが、お酒のおかげで特別に気を遣う事はなかった。どちらかというと、5人が5人とも同じ質問をしてくるのが煩わしかった。「彼氏はいるの?」「一人暮らし、それとも実家?」「高校はどこ、部活は?」と訊かれて、最後には答えるのが面倒になっていた。他の子たちは冗談を言ったり笑ったりと楽しそうだったが、私は別段楽しくもなく白けていた。  私は公園のベンチで眠っていたらしく、徐々に記憶を取り戻していった。横には合コンで一緒だった男の子がいて、ペットボトルの水を飲ませてくれた。 「わたし、どうしたのかしら?みんなは?」 「えらい勢いで呑んでて、席で寝っちゃたんだよ。コンパが終わっても起きなくて、ここまで運んで来たんだけど、皆は二次会に行って俺が面倒を見る事になったんだ」 「ごめんなさい、迷惑を掛けてしまって。今、何時ですか?」 「11時を廻ったとこ。今から帰れるの?良かったら、送って行こうか?」 「えー!あの芽美って子は、2次会?今日は、その子の家に泊まる事になっていて」 「芽美って、あのショートカットの子だよね。あの子なら俺の友だちと中抜けして、最後にはいなかったよ。今ごろ、どこでどうしてるかなー?」  私はそれを聞いて不安になり、考え込んでしまった。家には友だちの所に泊ると言ってきた手前、今から帰る訳にもいかず、しかもまだ酔いが残っていて親に怒られるのは目に見えていた。芽美に電話をしても応答がなく、考えあぐねていると、 「泊る所がないなら、俺の部屋に来る?」と誘われた。 「でも、これ以上迷惑を掛ける訳にはいかないわ」 「迷惑ついでにって事で、構わないヨ。何もしないから安心して」  私はその意味が理解できなかったが、酔いも手伝って彼の後に付いて行った。
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