追憶のたこ焼き

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追憶のたこ焼き

 ああ、たこ焼き食べたい。  少し遡って、たこ焼き人生を辿ってみよう。  子供の頃は、年またぎの初詣に家族揃って行っていた。幸い近くに〈一之宮〉を冠する神社があったので、当たり前のように参拝し、当たり前のように()(みせ)のたこ焼きを買って、当たり前のように持ち帰るのが通例だった。1人1パックを丑三つ時に花札しながら食べるのが醍醐味。いい思い出だ。  町のイベントには出店が来ていたから助かった。  町内の夏祭り、運動会。(だけ?)  たこ焼きは、イベントの時にしか食べられない人気アイテムだったので、出店の方には感謝しかない。  余談ではあるが、同じくらい人気を博していたのが〈ポテトフライ〉。今は出会うことが困難な、練りポテトを揚げたものだ。  なんじゃこれは〜! と大自然の中で生きる私には、野菜の天ぷらと稀な鶏の唐揚げ以外の揚げ物だったので、歓喜するのも当然だ。あ、コロッケもあったな。  当時バーガーショップなんて私の町にはなかった。  大手コンビニだってない。  そんな中のジャンクものは希少なわけで、正月、夏祭り、運動会の三度のチャンスを逃すと食べられないくらい価値のある商品だったのだ。  おばあちゃん自家栽培のじゃがいもしか知らないのに、練りって。混ざりっけ満載の練りポテトが子供の味覚を狂わせたのは確かだ。  ふぅ。  時代とは足早にやってきては過ぎていくもので、隣町のそのまた隣町まで行けるツール〈自転車〉が、たこ焼きとポテトフライの頻度をあげたのは言うまでもない。  そして、たこ焼き。  冷凍食品で簡単に手に入る時代がくるとは誰が予想したか。チェーン店なるもののスタンプ集めて1舟無料って誰が想像したか。年に三度のチャンスを確実にものにしなければならなかったあの頃が懐かしい。  教訓  大人になるのは、とても早い。
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