弐号器始動②

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弐号器始動②

 ここからは時間との戦いだ。鉄ではないテフロン風を信じて流し込む。100均寄ったついでにグッズも揃えてきたから完璧。具材も小皿に一々分けてあるから完璧。洗うのが大変だ。  タコさん投下。なんだか大きいのかな、はみ出しちゃってる。次は貴重な天かすセットだ。慎重にばらまく。なにしろ40個分の少量を半々にしなければならないのだから。  ふふ、うまくいった。行程は順調だ。  なのに何故だ。焼けないというよりは、煮えないみたいになっている。しばし待とう。説明書にも湯気待ちとうたってある。  湯気はまだか。 ──!  予熱が甘かったかー。3分って言ったじゃない。  (はや)る気持ちが時間を誤らせたか。  いや違う。タコが冷えてたのだ。しかも大きい。  少し休もう。  キッチン用に買ったパイプ椅子に座ろうとするも、先客が香箱(こうばこ)(ずわ)りにて「にゃあ」と鳴く。びっくり。  立っていよう。  いつもは「にゃあにゃあ」無駄鳴きしながら、猫なのに足音立てて近寄るくせに、こういう時は忍び足で気付かれ待ち。本領発揮といったところか。  私の椅子を占拠しているカワイ子ちゃんに気を取られている隙に、湯気がモクモクすごい出てた。  これはいかんと、ようやくひっくり返すも、1本のピックでは上手くいかない。100均に行って買い足しだ。  ピックマスターは1日にしてならず。  むむ。  プレートの平面部に流し込みが足らなかったようだ。たこ焼きが半球状態で仕上ろうとしている。流し込みに遠慮はいらない。堂々と覆い尽くせば良かったのだ。  あぶれた分を半球内に押し込むことで【丸】が完成される。失敗から導き出された……わけではなく、そう書いてあったのを見なかった作り手の不手際だ。  初号器の初焼きの記憶は、熱で朦朧としていたから弐号器には何もいかせない。  さてどうする。  今さらどうすることなどできはしない。半球からはみ出たタコさんが落ちないよう優しく拾い上げ、お皿に移し並べる。  並べられたそれは、さながら鈴カステラだった。  教訓  紅しょうがも買いましょう。
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