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山
幼い頃には
ばあちゃんと 二人で
山へ行った
山菜採り きのこ採り
と称して 山へ行って
おむすびを食べていると
ウサギが飛んで出たり
鹿が通り過ぎたり
野犬が寄ってきたり
小鳥が遊びに来たり
そのうち僕は ひとりで
山へ行った
何しに山へ行くかって?
何もしないために行く
何もしないで 黙って
山の一部になっている
心を うさぎにする
弱く 優しいうさぎ
人間 を 取り囲む さまざまな 命
命の 寄り添い方を山は教えてくれる
他の命の自由を見守る 距離感
他の命の尊厳を慈しむ 畏れ
山の空気を読みに行く
山にそよふく風になる
崖登りの途中で転落して
頭を打って血まみれになった時は
母さんには
その辺で転んだと言った
木登りして枝にセーターが引っかかり
取れなくて脱ぎ捨てて帰った時は
母さんには
どこで脱いだか忘れたと言った
危ないから山へ行くんじゃない
と 言われても行くだろうから
初めから
ムダな心配をかけない方が良い
それは 今も同じ
我ながら危険な男だと自覚あり
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