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僕、香月波瑠は『華楓学園』という名の男子校に在籍している、普通の男子高校生だ。
小中高とエスカレーター式のこの学園で、親衛隊隊長を務めているということを除けば、ではあるけど。
入学して一年以上経つ今でこそ、この学園の異常さ慣れてきたけどっっ。男をアイドルのように全力で愛し、推しの様に扱う奇行については正直言って共感出来ない。
だったらそんな役目に就くな、って話だけど、、いや本当に僕だって不本意だったんだから
任命から早くも2ヶ月、ズルズルと過去の失態を引きずっているわけだが。入学当初から「優しい頼れる人物」であることを徹底している僕は残念ながら、このポジションはかなり周囲への印象操作に向いていることに気づいてしまった
だから、せっかくの落ち着く昼食の時間を邪魔されたとしても、隊員の電話を優先するしかなかった。
まぁ、その結果がこれだよね。
すぐに食堂に駆けつけた僕が目にした光景は最悪の一言に限る。空き教室から一番近い出入り口、二階席の扉から入ると、隊員の報告通り階下は嵐の中だった。手すりから下を覗き込んだその時、会長様が腹パンを喰らっているのが目に飛び込んできたのだから、さらに惨事はでかくなる。
そして、渦中の周りのテーブルには僕のとこの隊員が1、2、3・・まあ10人ほど。射殺さんばかりの目々は転入生らしきボサボサ頭の方を向いている。おーい、その構えるテーブルナイフとフォークは今すぐおろせ。
基より過激派、生徒会会長親衛隊。それが僕が所属する学園最大級の親衛隊だった。
腹を押さえて座り込む会長に、他の生徒会メンツはせせらと笑う。ツラはいいくせに中身は相変わらずだね生徒会よ。ちょっとは心配する素振り見せてあげなよ。それならウチの子たちの方がまだ可愛げがあると思う。
まぁでも原因はオマエだろバ会長。どうせ、俺がキスして喜ばない人間はいないとかなんとか思って、興味本位で手出して反撃を喰らったんでしょ。
これから起きるであろう騒ぎの規模を僕はまだ想定できていなかった。
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