Murder for a jar of red ruM

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Murder for a jar of red ruM

そのあと、二人の死体は業者(お掃除屋さん)がきて回収していった。 私とアダミは、店を出てリメイクされた70年前のキャデラックデビルに 乗った。「今からどこに行くんだ?」「...俺の寓居だ。」 「それにしてもいい趣味してんねぇ、今どき存在も知らんやつのほうが多いよ、キャデラックデビル」 「わかるか?俺はどこぞのイタリのシェフが作った、車なんて嫌いでね。」 趣味人のどこにでもあるような会話だ。状況を除けば。何気ないように、私は装ってるが、この状況自体がすでに危機的だ。眼の前じゃないとは言え、近くで二人も死んだ。正直何が起こってるのかさえ理解できていない。 「ついたぞ。」 あそこの店から、小一時間ってとこか、セントルイス南西の診療所につくと、業者の車はすでにもうあった。「降りろ。」「へいへい」 この診療所の印象はまんまだった。若緑の板材の壁。白い枠。 ステンドガラスと十字架を見るに、教会も兼ねているようだった。 地方のカトリックはどこも同じようなものだな、と率直に思った。 玄関を開けて、入って、神父や尼さんに挨拶したあと中を見た。新鮮だ。 中に入ってみても、なかなか趣のある雰囲気だ。もとは真っ白な色だったろう な床のタイルは茶色に古びている。掃除は怠らなかったのだろうか。 割りと経っていそうな割には、全体的には綺麗だ。さすがクリスチャン。 私のような人間はあまり教会や診療所などという、善良な市民が使う公共施設には入ったことがない、仕事でもそうそうないので、アウェイ感というか、 場違い感が半端ない。まぁこの後もっと場違いなことするんだけどね... 入って廊下奥の診療室らしきところに、行くと思ったのだが、 来たのは、階段の下。なにか不自然な動作をしている...「...地下...!」 思わず声に出てしまった。黙っていたアダミが喋り始めた。 「ここの地下は、もともと南北戦争で使われていた、武器庫兼集中治療室 みてぇなところだ。ここでチップを取り出してもらう。」 ハッチを開けながら、軽くそういった。ハッチが開くと、錆びた鉄臭いのする梯子が、10ヤードほど伸びていた。そこを降りると、いくつかの部屋あった。ここの地下のことを、上の人達は知っているのだろうか。 いくつかの、部屋を紹介された。さっきの新鮮な診療所の印象はまったく もってかわっていた。地下にはこんなところがあったぞ、と。 手術室には、もう死体が置いてある。そのあと、衛生管理を一通り済ませ、 ついに、チップの摘出に臨むところだ。アダミが言うには経験があるなら早く終わると言っていたが、私は、死んだ人間の摘出手術なんてしたことがない。 まぁ、言われたとおりにするか。探知機を使う古典的な方法で、チップを特定し、摘出。確かに、言われてみれば簡単だったし、早く終わった。 だが、やはり死体を手術するのは気が引ける。果たして、そもそもこれが手術と言えるのかどうか。そのあと、普段着に着替え、同じ地下室のリビングの ようなところで、話をした。聞きたいことは、山々だ。 アダミと小一時間話した。私はとりあえず、気になっていたことを質問しまくっていた。特に、気になるのは店長があの男を殺したことだ。ちょっと気が早かっただけかも知れないが、なにかおかしい。情報屋の勘がそう言ってる。 「一ついいか?まず何故店長を殺した?」 「あいつは、チップを埋め込まれていた。それに...」と、言いかけて、渡されたのは、誰かの似顔絵。おぼろげながら店長に似た、手配書だった。 「危険人物だ。奴はREVIVERという、組織の幹部。この組織は、カトリックの一宗派が興した、オンラインサロンが発端だ。今では神に誓った狂信者たちが名前の通り、第二のキリストを探し追い求めている。そして、ハルマゲドンだが何だが知らねぇが、それに備えるということでチップに手を出した。そんな、組織の幹部だ。早急に殺らなければならなかった。」 「どうかしたか?」「いや、ちょっとそれのことについて、考えていてな、」 チップが埋め込まれていた...男はこの際いいだろう。組織の幹部が?最終的にそれは自分を捧げる?というか、なぜ殺さなければならないんだ?手術して取ればいいんじゃないんのか?聞いてみるか。 「なぜ...対象を殺す必要がある?手術すればいいんじゃないのか?」 「...それは俺も考えたことがある。だが、上の命令は必ず殺せ、だ。 ...きっと、何か殺さなければいけない理由があんだろう、少なくともこの国の中じゃな。」 殺さなければいけない。何か、この国で流してはいけない、CIAや国防省が 隠してきたような、重大な情報でも男が握っていた。だから、 殺されたとでも言うのか? 「それと、これからお前が仕事していく中で、このマイクロチップをと呼んではならない。」 「何か、隠語でもあるのか?」 「REVIVERでは、」 摘出したマイクロチップを俺の目にかざしながら、いった。 「こうよばれていたらしい、一本のラム酒瓶(甘い密の味)」と。
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