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Now I woN
「ヘヘッ!どうひっくり返ったって、俺の勝ちだ!!」
この私、ケニー・リチャードに男は宣う。いつものバーでの賭博が、
順調に行われる。だがその順調に組み込まれたプランには、
いつものようにワルが潜んでいる。
「ロイヤル・ストレート・フラッシュ」
今、私は勝ったのである。いつもどうりに。計画通りに。
「ハッ!?イカサマだ!んなことありえねェ!!」
そうだ、もちろんイカサマだとも。だがそれがどうした。手の内がわからないようでは、イカサマではない。これが幸運だというしかないだろう。
神の存在は否定できない、神は死んでいない。神はサイコロを振るのだ!
「なにか、文句でもあるか?私は少しばかり、神に肩入れされていただけだ」
「んだとてめぇ!?ふざけんじゃねぇぞ!払わねぇぞこんな賭け!」
「すみません、お客様、支払いの同意の上で賭博を行っていますので...」
「こんなの賭けなんかじゃねぇ!!出てく!畜生!!」
「おい!その前に聞きてぇ事があるんだが、」
私はモノクロの古ぼけた写真を提示した。
「この爺さんを...知らねぇか...?」
「何だこの爺...?...知らねぇな、兎に角こんなもん払わん」
「本当にか?よく見ろ!知ってるんだったらこのまま帰してもいい。」
「...ん?あんときのとっつぁんじゃねぇか?あぁ...」
「バンッッッ!!!」
バン!というリボルバーの銃声が聞こえたと思ったら、男は死んでいた。
何故撃った、とすこし戸惑った。それは、
いつもならもっと聞き出してから殺すはず。
まぁ相当機嫌がよくなかったんだろう。
「アチャー困りますよ、バーテンさん。」
「少し...五月蝿かったもので。」
この男の人生はセントルイスのとあるバーで幕を閉じたのである。
この男を激情させたことには理由がある。金?んなチンケなものじゃない。
この男の賭けの代金は白黒の爺さんの情報になるはずだった。
だが、機嫌のワルい店長によってぺしゃんこされてしまった。
「こいつ、どうすんだよ店長さんよぉ...」
「...私が片付けておく...」
「まったくタチのワルい話だぜ、バビロンの鎌賭けられるのはこっちだっていうのによ」
そうして、男の死体は運ばれた。その運んだ店長と一緒に。
(店長遅くねぇか?もう30分以上も経ってるぜ)
入店の鈴の音が鳴る。深緑のコートを着た小汚い金髪が現れた。
そして直後にこう言われた。
「今日からおまえが店長になってもらう」
は?と思った。そもそも誰何だこいつ、と。
「どういう意味だ?...ってかてめぇ誰だよ」
「俺の名前はアダミ・ザンケィティお前は?」
「私の名はケニー・リチャードだ」
「本当の名を言え」
「ジェー厶ス・ハイネケイド。これでいいか?何を知ってる?
そうだ、店長は見なかったか?」
「あいつは賭博に負けたやつと一緒に地獄に行ったさ」
「何が要求だ。俺を殺すのか。何がしたい?」
「おまえにやってほしいことがある」と。
私は西海岸でもともと、闇医師をやっていた。今は情報屋だが、
その伝手で、入手したい情報があるらしい。
「今、殺された人間は体にチップが埋め込まれている。そして今後そのチップを集めてほしい。」
「まるでハイエナみたいな仕事だな、まぁ性に合うが。そのチップとやらはどんなものなんだ?」
「...すまないが、実績を積んでからそれは教えよう...」
(つまり、めちゃくちゃ危ない仕事で、チップのことを知るときにはもう後戻りできねぇってことじゃねーか)
「もちろん、対価は払おう。」
「いいだろう。引き受けよう。だが私は金以外のものを追っている。金にはかえられん。それはどうなんだ?知っているだろう?」
「チップの真相がお前の求めているものだ」
そして、また死んだ男に提示した写真と同じものを見せた。
「じゃあ、この爺さんのことも知っていると?」
「あぁ、そうだ。」深く頷いている。そして、少し考えるように首をかしげ、
「手始めに、まずあいつらのチップを探してくれ」
こうして、とあるセントルイスのバーテンの初仕事は
死体解体となったのである。
《つづく》
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