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「あのさ」
振り絞った声は変に掠れていて、情けない。それでも佐伯くんは私の次の言葉を笑いもせずに待っていてくれる。優しい瞳で。
「ずっと好きでした」
ぽつりと溢れた言葉と同時に出た涙は、きっと優しい佐伯くんを傷つける。わかってたのに制御できずに次から次へと溢れ出してきた。告白の後押しだってここまで、なつにしてもらうつもりはなかったのに。やっぱり、私はダメなままだ。言わなきゃよかった、こんなこと考えなきゃよかったな。
「ありがとう。でも、ごめんな」
「ううん、わかってたの。でも、もう会えなくなるから」
「違う地方の大学だもんな。でもまた会ったら仲良くしようぜ」
差し出された手は私よりも倍大きくて、暖かい。やっぱりこんなとこまで、好きだな、なんて振られたすぐあとなのに頭をよぎる。涙のせいで言葉がもう出てこなくて、精一杯伝わるようにただ頷く。
「伝えてくれてありがとう。さながいい人に出会えて次はうまくいくように祈ってるよ。ごめんな」
私の言葉をもう待ってくれない彼の背中は、やっぱり輝いていて好きだ。きっと、佐伯くん以上に好きになれる人にしばらくは出会えないと思う。佐伯くんの背中に大きく手を振って、なつの肩に顔を埋める。
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