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「で、ここに来たってわけ?」
「はい。あー、やっぱりオムライスは最高~!」
やれやれと肩をすくめたイケメン――陽斗さん――に適当にうなずきつつ、スプーンをすすめる。
真っ赤なケチャップライスに、とろとろの半熟卵、濃厚なデミグラスソースのハーモニーがたまらない。
「飲み会の途中で出てきたから、お腹がすいちゃって。もう、いくらでも食べられそう。デザートも食べたい。でもコーヒーもいいなあ。いや、お酒を追加で飲むのも良さそう。やーん、決められないー」
「カロリーを気にしないその潔さがいいね」
「美味しいものは、口に入れた時点でカロリーが昇天するから問題ないんですよ!」
「一花ちゃんは好きだね、ゼロカロリー理論!」
ステンドグラスのランプシェードから伸びた光が、テーブルの上を柔らかく照らしている。やけ食いするつもりが、普通に美味しくいただいてしまった。
「家みたいで落ち着く~。ご飯も美味しいし、もうここに住みたい」
「俺と結婚する?」
「やだなあ。ここのオーナーは、陽斗さんじゃなくてマスターでしょ」
「俺がここのオーナーなら結婚する?」
「考えときます」
会うたびに繰り返される軽口を笑って流す。だって最初に出会ったときから、こんな調子なのだから、本気にしても仕方がない。いやまあ、最初はちょっとドキドキしたけれど。毎回されてりゃ、冗談にも免疫ができますって。
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