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 社会人になったらまたここに来よう、そう思って頑張っていたら、偶然ここから近い会社に就職できたのだから、縁があったのかもしれない。実は、最初に希望していた会社よりも良い企業に就職できたおかげで、たびたび外食できるだけの余裕もできた。まあ、ここのメニューが都心にしてはびっくりするくらいのお買い得価格に設定されているっていうのもあるんだけれど。なんか陽斗(はると)さんが前に言ってたなあ、「家賃払っていない味」だかなんだか。  デザートを選ぶ私の横で、お冷やを注ぎながら陽斗さんが微笑んだ。 「泣いている一花(いちか)ちゃんも可愛いけれど、やっぱり笑顔の一花ちゃんが一番だね」 「美味しいものを食べると元気が出るんです。あの時のオムライスに一目惚れしたんですよ、私は」  本当は陽斗さんの優しさにノックアウトされたんだけれど。 「結局マスターのカレーは食べていないしね」 「なんか浮気しているような気持ちになっちゃって。オムライス以外、頼めないんですよね」 「そりゃあ、愛情たっぷりに作っているからね」 「マスターの愛情たっぷり!」  陽斗さんがいきなり笑いだした。そのまま、いたずらっ子みたいな顔でささやかれる。 「一花ちゃんのオムライスは、最初に出会ったときからときからずっと俺が作ってるよ?」 「は?」 「好きなひとには、俺が作ったものだけ食べていてほしいからね」  当然でしょ?みたいな顔で微笑まれても、困るんですが。え、陽斗さん、ホール担当じゃないの?
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