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遊び
警察を呼べ!いや、落ち着け、警察を呼ぼう。
普段から、コンビニでバイトしてるから、バイト中にあまりにも窃盗が多いやら、暴れる客もしょっちゅうなので、つい大声で叫んでしまった。自分の部屋の中なのに。
実際は、お店で叫んだことなんてなくて、コソコソと通報してる。犯人達の逃げ足の早いこと、早いこと。
受話器をおいて、振り向いたらもういない。品物を取られるだけ、取られていると思う。好きなだけ。
会計するのに一苦労。保険で聞くから平気。でも、お店によっては利かなくて、自腹を払ったけ。
正義感出して、犯人に殴られたら敵わない。自分は自分の生活がある。
正社員なりたいけど、この御時世。
バイト掛け持ち、派遣掛け持ち。せめて交通費を出してくれ。
待て、この状況を考えろ。
自分の部屋の中に、乱雑に置かれている。いや、放置されているこの女性下着の山山山。
百花繚乱、パンティの山。ベッドの上には、ブラの山。サイズは恐らくDカップ。そういや、アネキの下着を洗ってから、女性下着なんて触ったこともない。
あの下着は、かなり頑丈で、汚れを落とすのに、ゴシゴシ擦っても平気だった。と記憶している。カアちゃんに聞いたら、綿だって。
でも、目の前にある下着は、かなりヤワそうだ。フワフワ。
台所にある指定ごみ袋にこれらを突っ込んで、厄介事とは、おさらばしよう。
俺は、賞味期限切れの弁当を陳列棚から、外すごとく次々と袋に、この下着たちを片付ける。自分ながら、このバイト人生に初めて、惚れ惚れする。
この素早いスピード、これもすべて経験が為せる技。
ブラジャーは、厄介で、紐が手首に引っかかる。
ピンポンとなるチャイムの音。
こんな時にドキッとさせる。自分にやましいことなんて皆無なのに。
俺は、はいと返事する。語尾が少し震えている。
どなた様でしょうか?何いってんだ俺。これは、お店のマニュアル。バイト人生を今度は恨む。
返事がない。これ幸いに、急いでごみ袋の山たちをベランダへ投げ捨てる。
パンパンと手を叩きながら、白いTシャツの縁(へり)で手をふく。
ピンポンと再度、音がなる。
返事がきこえなかったのか?
今度は、ドアに近寄り、はいと大きく応えながら、ドアノブに手をかける。
ドアを開けながら、ゆっくりス・マ・イ・ル。
何か用ですか?
警察ですけど、この辺で下着ドロボウがありまして
下着ドロボウ?いや、うちはその逆、わんさか部屋に女性ものの下着類が入っていた。
何か知ってることとかありますか?
いや、実は、
言おうとして、言葉がつまる。今、私何をしてましたっけ?
下着を袋詰にしましたよね。自分で、再確認してどうする。
振り返る。確かにあの下着たちは、部屋の中にはない。また、確認。
どうかしましたか?
いえ、ちょっと確認を。
確認って?追及された。
えー、確認は確認です。警察官は、リーダーか。嗚呼、派遣人生も恨めしい。
警察官は、変な物でも見るような目をした。
やばい、心の中で思った。このお客様の気持ちをよくして、速やかにお送りしなくては。自分は、お客様第一主義。
おーい、終わった。階下の方で呼ぶ声がする。
そうですか。訪ねてきた警察官が応えてる。続けます?
引き上げる。困ったような声がする。別用が入ったみたいだ。
警察も人手不足なのか。
かけ持ちですか?
事件のかけ持ちなんてありませんよ。
ニコニコとその警察官は、笑った。
その顔を見て、昔、遊びで、いじめて辞めさせたバイトの男子高校生に似ていると思った。
近所の中学校の女子学生に人気があって、気に入らなかった。
それだけ。
後からコンビを組んだバイトは、酷かったけど、自分と気があった。
あのコンビニ、潰れたっけ。
また、来ます。
彼は、その潰れたコンビニの駐車場で、よくくつろいでた黒猫のようにニヤっと笑った。
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