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「目撃者を呼べ!」
怒気のこもった声が室内に響いた。
取調室の隣にある小部屋。
窓のない薄暗い室内では、太い腕を組み強面のがっちりした男とひょろっとした困り顔の若い男が、マジックミラー越しに取調室の様子を見ている。
「おい木下。いつ来るんだ、目撃者は!」
「はい。今、こちらに向かっているところです、不破警部」
眉間に深い皺を寄せている顰めっ面の不破警部は両手で頭を掻きむしった後、両耳を引っ張り、ぴんっと弾く。
木下と呼ばれた若い巡査は身構えた。この癖が出るということは相当イラついているからだ。
「被疑者はまだ、口を割らんのか!」
「はい。小早川警部補が取り調べに当たっていますが、まだ落ちないようです」
取調室の中ではスーツの似合うインテリ風の刑事が男を見下ろしている。
椅子に座らされ俯いているのは上下黒いジャージに身を包んだ、ジョギング帰りのような男だ。
今時の若者という感じだが、垂れ下がる長い前髪の隙間から窺えるその表情は、著しく疲れ切っていた。
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