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「でも、今回もそうだ。あなたは僕を逮捕できない。なぜなら、現行犯逮捕できてないから。あなたの目撃証拠だけでは、弱いよ。あれだけ警察署内に人が居るのに、誰も僕のことに気付いていないのだから。  僕を、有罪にはできない」  美しい笑顔で、青年はつらつらと現実を語った。  その上、 「第一、さ。僕は未然にトラブルを防いでいるんだよ」  と言い始めた。 「よく考えてごらんよ。検問でもして、七星会のメンバーを捕らえてごらん。なんとかミクスで少しばかり景気が良くなったと言われてはいるけど、実際、まだまだ不景気。今時、バイク改造して乗り回している連中ってのは、ある意味、金持ちの坊ちゃま・嬢様なんだよ。貧乏暴走族は、金のかかるバイクに早々に見切りをつけ、携帯に鞍替え。デコる方に、一生懸命さ。  そんなご子息様達を捕まえたら、後々、警察が圧力かけられちゃうよ。そういうのって、警察としても面倒なんじゃない?」  飄々と語っているが、全てが妙に的を射た発言だ。  確かに、昨今、暴走族は減少した。  この近辺で残っている暴走族は「七星会」と呼ばれるグループのみだ。  僅かに残った暴走族のメンバーを吸収しつつ、今やここいらの一大勢力と化している。 「……詳しいな。 君、名前は?」  幸司が尋ねた。 「本当は教えないんだけど、あなたには特別に教えてあげる。僕は大神玄冬(おおかみげんと)」 「一体、何者なんだ?」 「それは教えてあげたいけど、教えない」 「何故?」 「そこから先は、有料だからだよ。」 「ゆ……有料?!」  幸司は意外な答えに驚いた。  思えば、この青年・玄冬(げんと)には驚かされっぱなしだ。
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