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『それで、オレに白羽の矢を立てたと?』
電話の向こうで、神保は笑いながら言った。
3コールのうちに電話に出た彼に、手短に事情を説明すると、ネット回線が溜息を拾う。
「何かあるのか?予定」
僕が訊ねると、機械に置き換えられた声が困った風に笑った。
『まあ、予定らしい予定は入っちゃいないが…』
「だったら頼むよ、もう神保くらいしか頼める奴がいないんだ」
都合のつきそうな連絡先の全てに当たったわけではない、というより、まだ直接打診したのは神保だけだったが、あながち嘘でもない。
すぐに来られそうな人間が他にいたとしても、相手のあることだ。向き不向きもある。
それに、いざ誘って断られれば、タイムロス以上のデメリットがある。
噂でも立てられれば、休み明けには大学中に知れ渡ることとなるだろう。
窮地を避けるためにも、僕は一発で、この神保を陣営に引き入れる必要があった。
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