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自宅の周囲は見渡すかぎり田んぼで、めだかや鮒、ザリガニは捕り放題という田舎で生まれ育った千夏が小学生の頃、二歳違いの兄との喧嘩はしょっちゅうだった。手でかなわないから口ばかり達者になる生意気な妹というよくあるパターンである。
そんなとき決まって味方してくれたのが祖母であった。
兄が三個入りのプリンをすべて食べたことを泣きながら訴えたときは、「今度は千夏が全部食べていいから、同じものを買っておいで」と小銭をくれた(今思えば、兄が買いに行くのがスジではとも思うが、当時の千夏は歓喜した)。そんな祖母は、戦時中に女学生で竹槍訓練をした過去を持ち、やや直情傾向ではあったが、曲がったことが嫌いな性格だった。
数年前、祖母が亡くなったとき、棺にすがりながら、千夏は念じた。
おばあちゃん、これから先、私がよくないことをしたときは天国から叱りとばしてよ。
祖母からのメッセージだと気づくのに時間はかからなかった。
(続きは『別冊ゆる天狗 鼻・髭・いやな手紙』にて掲載。全体1600文字)
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