真冬のロックンロール

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今夜もキノの動画に、スマホからコメントを入れる。 「キノさんの歌に出会って、私はとても心が満たされています」。笑顔の絵文字をひとつ添えて送信し、スマホを閉じた。 布団に入ったら、いつもはすぐ眠れるのに、今日は眠れない。コーヒーも紅茶も緑茶も飲んでないはず…と考えていたら… 目の前にふわっとした気配を感じた。 キノだ。 確かにキノだ。 キノの魂の分身が、私のそばに来てくれた。 こんなことは初めてなのに、そう確信した。 少しだけ手を近づけてみる。あたたかい。 私の思いが、彼に届いてたのかな。 そんなことはあるはずがない、と思うけど、絶対にないとも言い切れない、とも思ってる。不思議でもないし、怖くもない。 彼の心に今、私がいるのかな。どうなのかな…。分からないけど…。 話すわけでもなく、私は布団を被ったまま、そのふわっとした温もりを感じていた。 いつまでもここにいてほしいけど、それは言えない。彼を私のものにすることなどできない。でも今、あなたをとても近くに感じる。実際は遠く500マイルも離れてるのに。 誰にも邪魔されない、二人だけの時間。魂が見つめ合っている。 こんなことが…本当にあるんだ…。
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