真冬のロックンロール

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コートもマフラーも手袋も着けなくていい。旅費も不要。乗り物の時間を気にすることもないし、歩き疲れることもない。 ただ、行きたい時にいつでも行けるわけではなさそう。 本当は魂だけじゃなく、体ごとそばにいたい。けど、それは無理。ミュージシャンとその一ファンでしかないのだから。 ジリジリした気持ちで就寝するしかない。 今夜は冷え込む、と、さっき消したテレビが言ってた。お風呂に入ったけど、湯冷めしたかな。寒い。 布団の中で眠りに落ちるのを待っていると、全身が温まってきた。さらにだんだん熱くなって、そのままその日を終えた。 次の日、彼のSNSには文章が綴られていた。 昨日、動画をアップしたあと、高熱が出た。今日は少し落ち着いたから病院に行った。風邪と診断され、あとは薬を飲んで寝てたので、もうほとんど回復した、と。 昨夜の胸騒ぎの原因はこれだったのかな。快方に向かっているというので安心した。 同時に、彼の役に立てたのかも、という喜びが湧いてきた。根拠はないけど。 もうじき私の熱も下がるだろう。
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