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雪がもうじき世界を白く覆ってしまう。
それは純粋な人を芯から凍えさせる雪でもなければ、俺達の知っている雪でもない。
その雪は生きている。
その雪は殺意の籠った意思を持っているのだ。
俺は避難所エリアの建物の窓から外を見た。
それは空を灰色にした雲から降ってきているわけではなく、海にできた氷の城から風に乗って陸地に降り注いでいるのだ。
十年前、突如として宇宙からおよそ百メートル四方の謎の隕石が太平洋に落ちた。
隕石衝突の余波で大きな津波が予想されたが、それはまったく起きず、逆に海が氷始めたのだ。
それも一瞬にして…。
その隕石は衝突した周辺に富士山よりも高い氷の山を作り、そこから雪のような物を風に乗せて陸地まで飛ばしているのだ。
常識的に考えれば、そんなことはあり得ない。
起こり得るはずがないのだ。
だが、窓の外に見えるその氷の城は次第に世界を白く染め上げるだろう。
地球の外から見たら、もはやかつての美しい姿を見ることができないに違いない…。
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