第1話

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 演台の向かいの数列は、左右の列の生徒と目に見えて違っていた。明るい髪色ばかりで、制服も気崩している者が多い。  その派手な集団の中で、ひときわ目をひく存在があった。大人びた雰囲気が、周りの生徒と一線を画している。  金に近い茶髪。ヘーゼル色をした瞳は、どこか肉食獣を思わせた。  有馬とは距離があるはずなのに、その男の姿ははっきりとわかる。まるで吸い寄せられるみたいに、気付けば有馬は男を見ていた。  一度見たら忘れられそうにない、強烈な印象。  有馬が見ていたからか、目が合った男は気だるげな表情で小首を傾げた。そのリアクションで初めて、有馬は男を凝視していたことを自覚した。  目線を真正面に戻し、視界から男を排除する。何事もなかったように、有馬は残りの挨拶を続けた。
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