第2話

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 そんな『よろしくない伝統』も、有馬にはどうでもよかった。  有馬にとって重要なのは効率的に勉強することと、いかに体力を温存してバイトに費やすかだ。  そんな風に感じているのは、有馬だけではないはずだった。目的は違えど、みんな自分や自分の周りさえ良ければ、特に不満など持たない。  だから、秋に迎えた生徒会役員選挙で頼弥が生徒会長に立候補し、そんな風潮を変えるとスピーチで宣言した時は有馬も驚いた。  生徒会は代々、全員が普通科の生徒で構成されている。規則でそうと決まっているわけではない。スポーツ科や特進科の生徒も立候補して当選すればもちろん入ることは可能だ。けれど創立以来一人もいないという。頼弥はそこを変えると明言した。  全校生徒が集められた講堂で頼弥が登壇すると、黄色い声とともにスマホカメラのシャッター音が鳴る。そこへ教師が注意する声が重なった。  それでも頼弥が話し始めると、室内は不思議なくらいしんと静まり返った。
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