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拍手の中、突然頼弥が壇上を降りた。端にある階段を使わず真正面から飛んだのだ。
なぜか候補者の待機席には戻らず、生徒たちで埋め尽くされた間を縫って歩きだす。
頼弥の予想外の行動に拍手がやみ、代わりにざわざわと講堂内の空気が揺れた。
長い脚でスタスタと歩き、頼弥が止まったのは、後ろの方の端の席に座っていた有馬の傍だった。
「お前が欲しい」
よく通る低音が告げた声に、近くの女子が黄色い悲鳴を上げた。
有馬が一体何事だとぽかんとしていると、頼弥がさらに一歩有馬へと近づく。唐突に顎を掴まれて、正面から目が合うように向き直させられた。
ベーゼルの瞳に射すくめられ、息を詰めて固まった。
「聞こえてるか? お前だよ、孤高の王子様」
いったい何が起こっているのか、現状が飲み込めなかった。
「……は?」
数秒遅れでようやく反応すると、頼弥は不敵な笑みを浮かべた。
「有馬宏太。俺が会長になったあかつきには、お前を生徒会役員に指名する」
威厳ある声が響いた時、講堂がこの日一番のざわめきに満ちた。
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