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ここまできて突き返すのも大人気なく思えて、有馬は「いただきます」とサンドウィッチに手を伸ばした。
いつも頼弥が来る時は、後ろに誰かしら従えている。だけど今日は取り巻きの姿は見えない。その分少し気が楽だった。
「珍しく金魚の糞が見当たらないんだな」
一口食べ、その美味さに警戒心が少しだけ和らぎ、有馬は自分から口を開いた。
頼弥は微笑して、「鬱陶しいから撒いてきた」と答えた。
「なんだ、はべらせて悦に入ってんのかと思ってたけど」
「意外に毒舌だな、王子様」
頼弥に気分を害した様子はなく、さも可笑しそうに笑うばかりだ。
「というか、前も思ったんだけど、その王子とかいう気色悪いフレーズは一体なんなんだ」
孤高の王子様。講堂で初めて声を掛けられた時、頼弥は有馬のことをそう呼んだ。
「ああ、知らないのか? お前のあだ名だよ」
初耳だった。そんな奇妙なあだ名がつく謂れに心当たりがない。困惑して思い切り顔をしかめた。
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