243人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「関東随一の偏差値を誇る特進科の首席だ。入学式の日、どんなガリ勉君が壇上にあがるのかと思いきや、コレだぞ」
堂々と指をさされ有馬はムッとした。
「式の最中あれだけザワつかれて、まさか気づいてなかったとかねえよな? まあお前、おもいっきり「有象無象に興味ねぇ」って顔してたけど」
頼弥はそう言いながら喉奥で笑う、
問われて思い返してみるが、あまり覚えていなかった。正直挨拶の内容も雰囲気も覚えていない。ただ、目が合った男の鮮烈な印象だけが脳裏に焼きついている。本人にそれを伝えるのは癪で、有馬は気まずさに黙り込んだ。
「ちょっと顔色悪すぎで、髪型イケてないのが残念ポイントだな。お前これ、髪自分で切ってんだろ? ガッタガタ。あ、毛先ちゃんと整えてサイド流すのとか似合いそ」
不意に頼弥が手を伸ばして、有馬の耳の辺りの髪を手櫛で後ろに梳いた。大きな手は有馬の耳にも触れて、反射的に肩を竦ませる。
「勝手に触るな」
手を振り払うと、頼弥はハンズアップして、「失礼シマシタ」とまったく悪びれていない笑顔を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!