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有馬は短い息を吐くと再びサンドウィッチに噛り付いた。
「お前さ、特進科で完全に浮いてるっつーか四面楚歌状態なんだって?」
嚥下したものが、喉の途中で一瞬止まる。
特進科Aクラスは、中学時代は当然のように学年一位を張っていた人間の集まりだ。自らの頭脳への自負、常にトップに君臨してきたプライド。だけど入学して初めて上には上がいることを目の当たりにし、それらを打ち砕かれるのだ。
入学して数カ月。有馬は未だにトップを他人に譲ったことはない。
それでも日曜日だけを休息と予習の日と決めて、週六日アルバイトをしている。寮生活のお陰でその事実はクラスメイトに知られることとなり、それが彼らの自尊心を大きく傷つけた。
有馬としては、家族のために、生きていくために必死にあがいているのだとしても、他人の目にはそうは映らない。周りは隙あらば有馬を高みから引きずり下ろしてやろうと狙う輩ばかりだった。
しかしそんな感情を向けられても、有馬には構っている余裕はない。
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