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「別に実害ないからどうでもいい」
結局はこの答えに行きつく。
頼弥は「ふーん」と興味があるのかないのかわからない相槌を打つ。
頼弥がそれきり話すことをやめて、黙々と食べるものだから、有馬も無言で極上のサンドウィッチを食べ進めた。
ちゃんと口の中の物を飲み込んでから、再び頼弥が尋ねてくる。
「バイト替えるのか?」
傍らに広げたままで置いてあった冊子を、視線でさす。
「いや、増やす」
「は?」
「土曜日に長時間働けるところをもう一つ入れたい」
平日は授業が終わってからしか出勤できない上に、今の有馬では夜22時までしか働けない。その関係で今のバイト先であるレストランでは、ショートタイムの契約になっている。
「そんなに稼いでどうすんだか」
小馬鹿にしたような言い方に腹の奥がカッと熱くなる。だけど有馬はすぐに短く息を吐いてその熱を逃がした。
怒っても、熱くなっても、なんの足しにもならない。気力の無駄遣いだ。
規格外に裕福な頼弥が、有馬の状況を想像できないのも仕方がないことだった。
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