第3話

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「生徒会の運営を介して学園生活を謳歌するのは意義あることだろうけど、それでも俺は金の方が大事だよ」  看護師の母はそれなりの収入があるが、月収の半分以上は借金の返済に取られる。残りは生活費に充てられるが、まるで足りておらず、年間賞与で補填してどうにかなっている状況だ。  佑也は今年中学に上がったばかりで部活には野球を選んだ。率先して家事を担ってくれている眞子は、小学校のクラブ活動でダンスを頑張っている。末っ子の拓斗は今お絵描きに夢中で、目を見張るほどに上手だ。  父という大きな存在が急にいなくなってしまった事実は、きっと弟妹たちにとってつらく耐え難いことだ。昔から決して裕福な家庭ではなかったけれど、それでも父が、父の作り出してくれる温かな環境が、みんな大好きだったから。それを失った傷は二年やそこらで完全に塞がるものじゃないことは、有馬が一番よくわかっている。だけどちゃんと前を向いて歩いている弟たちを称えたいし、全力で応援したい。望むことはすべてさせてやりたい。惨めな思いなど絶対にさせたくない。  そのためにはお金が必要だ。
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