プロローグ

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「そうだ、これ」  注文の品をひとまず片付けたところで、佑也が傍らに置いていたリュックをあさった。 「初めてページ担当させてもらったんだ。って言ってもほんとにちょっとだけど」  まだしばらくは基本的に雑用要員だから、と佑也は照れくさそうに笑うが、少し誇らしげにも見える。そんな姿を見ていると、ひとりでに口元がゆるんだ。  佑也が雑誌をテーブルの空いているスペースへ置く。不意に表紙の人物と目が合って、有馬ははっとした。  白いシャツとブラックデニムを履いて、微笑を浮かべている男。長めの前髪からのぞく淡褐色の瞳がミステリアスな雰囲気を放っている。  思わず雑誌を凝視する有馬に、佑也は思い出したように声を上げた。 「あ、そういや兄ちゃんって高校の同級生だよな? RAIYAと。年同じだし」  瞳を輝かせる弟に、有馬は少しだけ気まずいような気分になった。
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