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「ファンクラブ! やっぱほんとなんだ」
すげーを連呼する弟に苦笑をこぼしつつ、有馬は雑誌を閉じる。その代わりにメニューの冊子を手に取った。
「ほら、追加の注文決めろよ。仕事がんばってるご褒美に、どんな高い肉でもおごるから遠慮せずに頼め」
手渡されるままにメニュー表を受け取った裕也は、ぱっと笑顔を見せて、だけどすぐにそれを引っ込めた。
「どうかしたか?」
「兄ちゃん、今日は俺がお金出すから」
「え?」
驚いて目を丸くする有馬に、佑也は見たこともない大人びた顔で笑った。
「就職したら、絶対兄ちゃんにご馳走するんだってずっと思ってた。そんなので俺たちが今まで兄ちゃんに掛けてた苦労とか時間のお礼にもならないけど」
「佑也……」
弟の真摯な言葉に鼻の奥が少し痛んだ。
「何言ってんだ、そんなの気にしなくていいんだよ」
声が不自然にかすれて、誤魔化すようにジョッキを呷った。
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