プロローグ

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「俺は兄ちゃんと三つしか年変わらないのに、兄ちゃんがなんでもできて、なんでもしてくれるからって、昔からずっと兄ちゃんに甘えすぎてた」  真剣な表情に有馬の胸に熱いものが込み上げる。 「実家にいた時、みんなで話してたんだ。早く兄ちゃんの負担を減らしたいって。眞子も大学とバイトがんばってる。拓斗だってもう高校生だ。母さんもまだバリバリ働くからって笑ってた」 「馬鹿、泣かすなよ」  冗談っぽく言ったけど、本当に目は潤んでいた。家族がそんな風に考えてくれていたなんて、有馬は知らなかった。 「兄ちゃん、今までほんとにごめん。だけど、もう大丈夫だから」  すっかり大人の顔つきになった弟に様々な感情が交錯する。  我が弟ながら本当に真面目で誠実でいい子に育ったと有馬は思った。三つしか変わらない弟に対して『いい子』という表現は違和感があるのかもしれない。だけど早くに父親を亡くした時から、自分が父に代わって母を支え、弟たちを守っていくのだとずっと思ってきた。家族が最優先というより、他はなかった。犠牲になっているつもりはなかったし、当たり前のことだと思った。弟妹たちを立派に育てあげることが、家族が笑って過ごせる環境を築くのが、有馬の目標だった。
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