第1話

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第1話

 個人で事業をしていた父が借金を残したまま逝去したのは、有馬が中学二年の時だった。連帯保証人となっていた母は、数百万円の借金を抱えた。  小学生の佑也と眞子。まだ保育園児の拓斗。看護師をしている母は、「お母さんが稼ぐから大丈夫」と気丈に振るまっていたが、すぐに立ち行かなくなるのは中学生の有馬にも想像できた。  自分がなんとかしなくてはいけない。高校へ行かず働きに出ることも考えたが、中卒が就ける仕事なんて限られているし、収入も期待できない。もっと長いスパンで考えた方がいいと考えたすえに、有馬は進学することに決めた。  都内にある私立協律館学園の特進科……それも最上のAクラスに入れば、入学金も授業料も免除される。寮もあり、優秀な成績をおさめていれば、寮費も学園側が負担してくれるという。有馬の家庭環境を把握し、親身になってくれていた担任教諭がその情報を持ってきた時、有馬はすぐに飛びついた。
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