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元々勉強は得意な方で、ただ授業を聞いているだけでも成績は常に上位だった。それでも全国の学年一位がこぞって受験する超難関校だから、担任には厳しいかもしれないと言われた。
だけど有馬にはこの道しかなかった。絶対に行かなければいけないと自分に言い聞かせた。
近所に塾の先生をしている人がいて、事情を知ってボランティアで勉強を見てくれた。
目標が定まるとやることはシンプルで、ひたすら勉強に時間を費やした。
母は無理をしなくてもいいと言ってくれたが、すでに有馬の心は決まっていた。弟と妹は率先して家事を手伝い、応援してくれた。
そして迎えた春、執念がみのり、有馬は無事に合格通知を受け取った。
同時に入学式の代表挨拶を依頼され、自分が入試でトップの成績だったことを知った。担任は目を剥いていた。
母や義務教育期間中の弟たちを残していくことに不安もあったが、この先家族に苦労をさせない為にはこれしかないと信じて、四月に入ると同時に単身上京した。
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