朔太郎の看病

1/1
175人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ

朔太郎の看病

___ひんやりして気持ちいいなぁ 身体中から湧き上がる熱が、おでこの冷たいおしぼりで吸い取られていく。ぼんやりして散らばってる意識が少しずつ一箇所に集まっていくようだ。 「少し、水分をとりましょうか?」 朔太郎(さくたろう)がグラスにお水を持ってきてくれた。ゆっくりと起き上がる。朔太郎(さくたろう)の手からグラスを受け取って口にする。 ___ん?あ、レモンの味がする 「飲めますか?少しのお塩と蜂蜜とレモンですが…」 熱を帯びた喉にすーっと流れ込む。それは私の中のよくないもの(?)を全部流してくれるようだった。 「ぷはぁっ!美味しい」 「あはは、まるでビールだね、花梨ちゃんの飲みっぷり!」 穂乃果に笑われてしまった。 「うん、でも、ホントに美味しくて。ありがとうございます、朔太郎(さくたろう)さん。だいぶよくなりました」 「どれ?」 そう言いながら私のおでこにおでこをくっつけてきた。突然の予想できない朔太郎(さくたろう)の行動に、なんの対処もできず固まってしまった。 「ひょぇっ!」 おかしな声が出てしまった。そんな私を見て、穂乃果が声を殺して笑っている、おかしくて仕方ないといわんばかりに、クッションをバンバン叩いている。 「まだ熱が下がりきってません。寝ていてください。起きたらお粥でも用意しますから」 ほら、寝てくださいとまた言われ、ソファに寝かされる。よっこらしょと横になろうとしてセーターの袖口とワイドパンツの裾が見えた、汚れている。そういえば猫に驚いて尻もちもついたし。 ___ちょっと、これ、ダメじゃん! 慌てて起き上がる。 「あの、私、すごく汚れてるんで、ここ汚しちゃいます、着替えないと」 「着替えは熱が下がってお風呂に入ってからですよ」 起きあがろうとした私の肩を押さえてまたソファに寝かす朔太郎(さくたろう)。 「えっと…あの…」 「気にしなくていいから、花梨ちゃん。お兄ちゃんの言う通りにしてて。それにね、お兄ちゃんのお粥、美味しいんだよ」 うふふっと笑う穂乃果。リスみたいに小柄でぱっちりした目は、幼く見えて可愛い。穂乃果がいるから、ここはありがたく甘えることにした。実際、今ここを出ていっても行くところはない。 「じゃ、お言葉に甘えて…」 昨晩はあまり眠れてなかったようで、安心したのかここが居心地がいいせいか、あっというまに深い眠りに落ちた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!