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朔太郎の部屋
公園から少し歩いて、背の高いマンションに着いた。さっきまで私が駿といた所に比べたら、家賃にして3倍くらい違うんじゃないかと予想する。自動ドアが開き、部屋の番号と何かの番号を押してさらにドアが開く。
「こっちですよ」
「あ、はい」
広いホールにはニ基のエレベーターがあった。中に乗り込む朔太郎に続く。
初めて明るい所で、朔太郎と並んだ。
___あ、そうなんだ…
歩いているときには気にならなかった二人の身長差が、エレベーター内に設置された大きな鏡の前ではっきりした。
___私よりきっと5㎝くらい低い
「ふぅ…」
小さくため息が溢れてしまう、朔太郎の身長ではなく自分の高すぎる身長がうらめしくなるのだ。
___この人もきっと、私のことをデカ女として見ちゃうんだろうな
今はたまたまローファーだからこの身長差だけど、お気に入りのヒールを履いたら、横に並ぶのも嫌がられるだろう。これまでにも何回もそんな場面に出くわした。そのことを回避するためにいつも高身長の男性と付き合ってきたのだけど。
「着きましたよ、こっちです」
7階の角部屋に歩いて行く。エレベーターも広かったけど、廊下も広い、落ち着かないくらい広い。
カチャリと音がして、部屋のロックが開いた。先に朔太郎が入り、またドアが閉まりオートロックが施錠された。
「スリッパはこれを、それから…そうだ、お風呂を沸かしますから少し待っててください」
「お風呂…?」
お風呂と聞いて、途端に心臓がバクバクした。考えてみたら初対面の男にのこのこついてきたのは私だ。何かあっても自業自得ということになるけど。
___これは…一宿一飯の恩義…になるのか?
かといってまたあの寒い夜空の下に出て行くのは、イヤだ。弱味につけ込むズルい男には見えないし。落ち着き払った朔太郎には、不純(?)な気配は感じられない。
それでも、現実感のない状況に少しばかり緊張する。とりあえず、引きずってきたキャリーケースは玄関に置いておくことにして、スリッパを履いた。
「あ、適当に座っててくださいね、今あったかい飲み物でも用意するので」
私の感情のアップダウンを気にする風もなく、朔太郎はいつのまにかカジュアルなルームウェアに着替えていた。
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