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交番勤務の醍醐味は、人の役に立つこと、はもちろんだが、人の往来の中の美人の女性を見ていられることだと思っていた。女性好きのチャラい男性とまではいかないが、彼にだって、女性、とくに美人に惹かれる理由が十分あった。
交番内を見渡すと、指名手配犯の似顔絵や顔写真がずらりと並んでいる。強盗犯や殺人犯をはじめ、凶悪犯たちの雰囲気というか目力というか、存在感に圧倒される。そんな顔に囲まれる生活を続けるうちに、優しい雰囲気の女性を見ているだけで癒されるようになっていったのだった。
中でも彼は、ある連続強盗殺人犯のことが気に掛かっていた。2年前、5人の女性をターゲットにした強盗犯で、いまだに逃走中の指名手配犯だ。被害者の女性は皆共通して、容姿の整った女性たちだった。ナイフで脅し金品を盗んだ後、刺し殺された。しかも、最近耳にした噂によれば、隣町で頻発している強盗もこの犯人の犯行手口ににており、同一犯の可能性があるという。幸いにも殺人の被害者は出ていないが、今でものうのうと女性を苦しめるこの男を、到底容認できなかった。
若い警察官は、その指名手配犯の男の顔写真が載ったポスターを、じっとりとしたまなざしで見つめる。キリッと整ってはいるが、中性的な優しい印象。他の指名手配犯と比べても、この写真の男は、明らかに異質なオーラを放っていた。正直言って、恵まれた容姿に嫉妬した。だがそれ以上に、この男をいつか必ず追い詰めて捕まえてやりたい、と静かに決意を燃やすのだった。
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