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僕が生まれ、五歳くらいのことだっただろうか、「第二次怪人獣災害」が発生した。怪人獣の襲来によって、僕の平和だった生活は瞬く間に奪われた。
気づけば周囲は火の海。家だったものはただの瓦礫の山と化していて、僕の左足を潰していた。父母もこの第二次怪人獣災害によって失った。
第二次怪人獣災害が起きた時、僕の家は一瞬のうちに吹き飛ばされた。
初めは何が起きたのか全く理解できなかった。
僕は家が吹き飛ばされた衝撃で気を失い、響き渡る爆破音と慟哭で目を覚まし、瓦礫のせいで体の自由が利かなくなっていることに気が付いた。そして瞬時に理解した。死んでしまうのか、と。そう感じた時、僕は怖くてたまらなかった。悲痛の叫びを腹の底から捻りだして、僕は助けを求めた。
「誰か!! 助けて!! お父さんっ!! お母さんっ!!」
必死に叫んだ。それでも助けは来なかった。皆自分のことで精一杯だったのだろう。意識が遠くなっていき、もう駄目だと思ったその時、彼は現れた。
「大丈夫か! 今助ける!」
朦朧とした意識の中、ペストマスクを被ったその人に僕は救われた。目が覚めた頃には病院のベッドの上だった。ベッドの近くには彼から渡された笛が残っており、彼の存在は夢ではなかったのだと実感した。彼はヒーローだったのだろうか、それは今でも分からない。分からないけれど、僕にとってはヒーローだったに違いない。
僕が目覚めた頃には第二次怪人獣災害も終結していた。第一次怪人獣災害の時と同様にヒーローが活躍したようだった。
そして時は流れ――現在、異能者の存在が以前よりも認知されるようになった。
異能者の数は日本全体で、千人に一人は存在すると考えられているようだ。学校に一人二人はいるかいないかといった具合だ。
異能を持たない人々に比べ、異能者の数は圧倒的に少数派だ。異能を持たない人からすれば異能者は異質で、異端だ。しかし、異能者たちは社会から排斥されることなく普通に生活を送っている。これは、異能者の生活が法律で保障されているというのもあるが、第一次・第二次怪人獣災害時のヒーローの活躍が大きいようだ。ヒーローたちが異能を持たない人と異能者の橋架けをしたと言っても過言でもない。
一方で世の中には異能を持って犯罪を行う、怪人も存在している。怪人によって生活を脅かされた人々も少なくない。そのせいで、異能者は全て殺してしまえといった過激な思想を持つ人々も一定数存在する。
異能が存在する社会は危うさを持っているようだ。今の社会は異能を持つ人と持たない人、そのどちらかに偏ってしまえば簡単に崩れてしまうような絶妙なバランスを保っている。いつ崩れてもおかしくない、そんな危うさがある。
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