ヒーローホイッスル

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 翌朝もいつものように学校へ行く前に河川敷に寄り、クロにご飯をあげようとした。 「クロ―! 朝ご飯だよー」  いつもならこうして声をかければ僕の方に近寄って来るのに、なぜか今朝はクロの姿が見えなかった。学校へ遅れるわけにもいかないので、仕方なくご飯だけ置いておくことにした。また夕方になれば会えるだろうと思っている一方で、どこか嫌な予感がしていた。そんな不安を抱えたまま、僕は学校へと向かった。  放課後、クロのいる河川敷に行こうとしたとき、垣野たちに呼び止められ、仕方なく三人についていった。早く終わらせて、クロも元へ向かわなくては。 「確認なんだけど、金は持ってきてないよなあ?」  本当にしつこい奴らだな。なんで執拗に僕に絡んでくるんだ。 「持ってきてるわけないだろ。それより、先を急いでるんだ」  垣野たちのことを振り払って、クロのもとへ向かおうとしたところ、取り巻きの一人には制止された。 「そうだよな、お前が持ってきてるわけないよな。そうだろうと思った。だから、俺は事前に手を打っておいたんだ」  垣野は話しながらポケットから携帯を取り出し、僕に一枚の写真を見せてきた。そこには無残な姿に変わり果てたクロの姿があった。クロかどうか判別がつかないほどに酷い状態だった。 「これはお前が悪いんだ。約束を守らなかったらこうなる」  垣野は話し続けていたが、途轍もない怒りがこみ上げてきていたせいで何を言っているのか全く理解できなかった。僕の中にはもう殺意しか残っていなかった。  殺してやる。  ポケットに忍ばせておいたカッターナイフを握りしめ、垣野の顔面目掛けて一直線に突き出した。  その行動もまたしても垣野に阻止され、僕の体の自由は空中で奪われた。 「お前……何やってんの? 俺にこんなことして許されるわけないよね? この、ゴミ虫が! 異能も持たない虫けらは地面でも這いつくばっとけ!」  カッターナイフを取り上げられ、空中でなすすべもなく垣野と取り巻きに袋叩きにされ、僕は気を失った。  
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