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目を覚ましたときには既に空が暗くなっていた。
痛っ!
派手に殴られたらしく、体中が痛い。もしかするとどこかの骨が折れているかもしれない。
起き上がってすぐに僕はクロのことを思い出し、底のないほどの怒りが込み上げてきた。しかし、それ以上に何もすることができなかった無力な自分が悔しかった。あいつらを殺してやりたかった。
クロ……ごめんね……。
クロのことを思うと涙が止まらなくなった。
ごめん……ごめんね。もっと僕がしっかりしていればこんなことにはならなかった。
でも、異能を使うあいつに勝てる気がしないんだ。どこまでいっても僕は非力な人間だ。
やるせない気持ちが押し寄せてきて、もういっそ死んでしまおうかとすら思えた。
――困ったことがあればこれを使いたまえ! 私が助けに行こう!
僕のヒーローはそう言ったけれど、こんなときでも助けに来てくれるのだろうか。藁にも縋るような思いで、首に下げていた笛を吹いた。
笛は――鳴らなかった。
結局、こんなものなんてただのお守りだったんだ。この世の中に僕を助けてくれるヒーローなんていなかったんだ。
僕一人の力でどうにかするしかないのか……。
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