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「板倉、お前、やらかしたな!」  上司の課長に叱られて、板倉は立ったままうなだれる。新製品のパッケージに同梱する説明書が古い版のまま印刷まで回っていた。もうドラッグストアに出ているものもある。リコール、商品回収だ。 「何億の損失になると思ってんだ!」  課長の怒号に、板倉は真っ青になった。 「卸と量販店を回って、今年中に回収して来い。休みなんてあると思うな!」 「休み返上、ですか?」 「文句あるのか。一刻も早く流通を抑えるしかないだろうが。消費者の手に渡って問題起こしたら、会社が吹っ飛ぶぞ」  休み……早苗とのデートの約束の日はもうすぐなのに。キャンセルするしかないのか。せっかくデートにまで漕ぎつけたのに、千載一遇のチャンスなのに。  それでも、板倉は、はい、わかりました、と答えるしかなかった。俺のミスだ。それは間違いない。だが上司のあんたは、ちゃんとダブルチェックしたことがあるのか。そんな大事な確認作業の上に、カレンダー配りとか次々仕事を入れられては、ミスも出る。  文句が、板倉の胸の奥から溢れそうだった。だが何を言ってもムダだ。この上司を含め、先輩たちが皆同じことをこなしてきた。板倉だけできないとは言えない。そんな筈ない、と言われるだけだ。
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