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 未亜はどこだ。板倉は部屋を見回す。一夜を共にした、あいつはどこに? 愛しさが溢れた。もう一度、眩しい光の中で、未亜を抱きしめようと思った。今度こそは大事にするから。板倉は気づいた。誰もいない。人の気配もない。  テーブルの上、缶が並ぶ間に、長財布が開いて置いてある。その横に紙があった。取り上げて見る。借りてく、と未亜の文字。板倉は急いで財布の中をのぞいた。中の紙幣が全部なくなっている。やられた。 「あいつ……」  板倉は未亜に電話をかける。何度呼び出し音が鳴っても電話に出ない。留守番電話にもならない。LINEを開き、すぐに連絡しろ、と入力する。既読がつかない。きっと返信はないだろう。 「あの、クソ女」  吐き捨てるように呟いて、頭を抱えた。なんで、あんな女を信用した? 酔っていたから? 欲求不満だったから? ずっと残業、休日出勤続きで疲れていた。太田早苗とのデートも諦めなくちゃいけなくて、俺は落ち込んでいた。絶望していたんだ。  誰でもよかったんだ。優しくしてくれるなら。女なら。溺れそうな人が小さな板っきれでもしがみつくように、俺は未亜の体にしがみついた。  頭を抱えた手の爪を頭皮にたてて、痛いぐらいに食い込ませる。奥歯を噛みしめる。後悔がとまらない。 ――欲望を吐き出して疲れきった板倉が眠りに落ちていく隣で、未亜は泣いていたような気がする。彼に背を向けて、あの女は身を震わせていた。その小さな体が愛しい、と消えゆく意識のどこかで思った。それも幻か……。
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