色盲のカメレオン

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色盲のカメレオン

...?...0?いうう1あぃしうぅ2ちゃいしずく3さい!しずくあ、4さい。 しずくはね、いもうとがいて1さいなの!やったーおねちゃんになったんだ!しずくは、もう6さいになりました!。しずくは今年で7才です。私と妹は8才と5才です!私は9才なの、早く大人になりたい!私は今日で10才、2分の1成人式でーす。私11才、友達とプリクラとってきた!。私、今日で12歳、中学受験の勉強しないと、私は今13歳もう妹は10歳です。私は14歳マジ勉強だりぃわw私は15歳なったけどまぁ割りと楽しそうな高校行きまーす。16にもなってまだそんなこともわからないの!? ...わからないよ!! 17歳になって初バイト正直、居酒屋キツすぎバックレよ... 18歳です。大学受験よりコンビニバイトのほうがキツイっす。 明日から社会人かぁ..ッシュポ..... 「19歳、斎藤雫です。最終学歴は棚高校です。居酒屋とコンビニのバイト経験があります。」 「では、着席ください...今回の正社員登用面接を始めさせて頂きます...」 今日は誕生日。死んだように、一人でロウソクを今、吹ききった。 一本づつ、歳を重ねて二十歳。一本消すごとに走馬灯が視界に流れ始めた。 そして、最近の記憶になり、気づけば私が2年間努めていたコンビニバイトの正社員として、新しく新社会人スタートを切っていたころのものだった。 先週から一人暮らしを始めた。親には反対されたけど、無理にでも、引っ越した。二十歳になって正社員として一年間、自立する時が来たと思ったから、いやもうこれ以上妹に不憫な目で見られたくなかったからだろう。今思えば二十歳になるまで色々あったと思う。本当に。 本当の成人式は、二ヶ月前に行った。棚高校のみんなは二十歳をこえても元気そうだった。私も久しぶりの雰囲気に和んだ、けどもうこの空気を吸っていたくない。息苦しいと思った。きっと自分はみんなを無意識のうちに馬鹿にしてたんだと思う。自分は断然、頭のいい中学出身なんだ、お前らとは違うんだ、と、そう高をくくって。交友関係も中学の頃の友達と仕事でできた友人しかいない。別に高校にもいなかった訳では無いが、きっとそれはそれじゃなかったんだと思う。合コンや、カラオケにも誘われた。でも自分で勝手にラインを引いていたんだ。「こんなの当然」「誰でもやってる」と。だからプライベート で遊ぶ友人なんて高校では一人もいなかった。今になって、たかが2年前になって、いや二ヶ月前にでも作っておけばよかった。 私はストロング・テロを片手に、イラックマのぬいぐるみを抱いて、濡らしていた。ほんと、高校の青春を捨てたようなものだと思った。 ティッシュで鼻をかんでゴミ箱にポイッっと捨てた。 ピロンと、SNSの通知音が、真っ暗な視界に落ちる雫のように、鳴り響いた。これが斎藤雫を現実に引き戻した。「そうだ、中学の同窓会だ。」 唯一の友達、(と言ってもあまりあったことはないが)柊優(同級生)から 招待されたグループラインの通知が、流れてくる。私の様相とは対象的に、 クラスの元中枢たちが、建築的な会話をしている。私も加わるべきか?と、 迷ったが、その心配はいらなそうだ。ッシュッポ。ピロン。ッシュッポ。 会話を眺めていること、数十分。どうやら、詳細が決まったようだ。 [7月の7日、七夕ね。場所は麻衣中の駅前で。一応集合時刻は午後5時から] 場所はみんなの案のところを回りたいけど...最後に行くのは麻衣中近くの 公園で!9時まで自由行動ね。みんな楽しくやろう!!] 次々と既読され、反応が相次ぐ。一回飲み会いかない?だとか。 9時までに、間に合うかわからないだとか。 この会話が一瞬で理解できるのは、同級生だけだろう。それはそうだが、自分も、元はこの中学校に通っていたことを再認識させられた。それにしても、 私はどうすればいいんだろう。柊と待ち合わせるか?でもなんか気まずそうだし、相手も独りでくることはないか、と思いつつ。DMで、「仲良かった友人たちと最初に集まらないか」と、柊に送った。数秒後には、既読がついていた。正直、自分みたいな人間にかまってくれるやつがまだいたことに、感激した。すぐにDMきて、OKとのこと。他の人にも話してみて決めるだそうだ。 雫は胸をなでおろした。自分自身、こんなにも早く同窓会の輪に入れるとは思っても見なかったことだからだ。また、グループラインを見てるうちに、 熱が冷めてきて、一連の出来事に自分が夢中になっていたことに、雫は気づいた。かならずしも、同じ中学だからってわけじゃない。成人式や高校の後悔はあるけど、自分の居場所があると、快いのだ。 カメレオンは自分の色以外のすがる色を知ったのだ。
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