磁力

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 女性が多く、いたとしても年の離れた男性ばかりの職場ではなかなか出会いの機会がないから三週間まえにマッチングアプリに登録した。自分に魅力があると自信をもっては言えないし、むしろ自信はないけれど、二十三という若さは魅力なんじゃないかと思っている。人口は少ないし若い世代も多くはない地方に住んでいるから、どれほど出会いの可能性があるのかはわからなかった。 雰囲気のわかる写真をのせて、プロフィール文には「遊びじゃない人と出会いたいです」と書いた。  登録してまもなく、いいねが複数きた。こんなにすぐにくるものなのだろうか。ほかの女性のプロフィールを覗くことができないから比較できない。  勤務中は、二時間おきに十分の休憩がある。一回目の休憩のとき、お茶を飲みながら、あたしはいいねをくれた男性たちのプロフィールを見てまわった。 年は近いけどまだ学生の子からいいねがきていた。学生は恋愛対象には思えない。遊びじゃないとしても、真剣に向き合ってくれると思えないし、将来をどうしても描けない。  年が上に離れているぶんにはあまり気にしない。じっさいに女子大時代に三十代の人とつき合ったこともある。  いいねをくれた人のなかに、二十五歳で住宅営業をしているという男性がいた。転勤で移住してきたらしい。好青年そうな写真とまじめなプロフィール文を確認して、いいねを返した。  そのお昼休憩の際、その人からメッセージがきていた。プロフィール文にも書かれていることに加えて、くわしい仕事内容や趣味のことにもふれられていた。  あたしのことは世代がちかいことと、写真の雰囲気がよかったからいいねをくれたらしい。下心のあるような文面ではない、ていねいな内容だった。あたしもメッセージをくれたお礼と、いま製造業で働いてお昼休憩中であることを伝えた。  男性からすぐに返信がきた。自分もお昼休憩です、と。  男性とはそれからやりとりを交わし、五日後に『お休みが合うとき、一緒に出かけませんか?』と連絡がきた。  あたしは会ってみないと結局どういう人かわからないと思っていたから、お願いします、と返信した。ふたりの予定の合ったつぎの土曜日に出かけることになった。彼は近くまで迎えに来てくれるという。あたしは生活圏を特定されるのをためらい、市内のショッピングセンターで集合することを提案した。彼もそのほうが安心ですよね、と了承してくれた。  男性と会うことを決めたのと同時に、もうひとりともメッセージでのやりとりをはじめていた。笑った横顔が印象的な写真を載せていた男性だ。年齢は十離れている。  メッセージをはじめたのが昼ごろで、テンポよく返信していたら、あっというまに会うことが決まった。 『今夜の仕事後にでも会ってみますか?』  急すぎる、と思いつつ、やっぱり会ってみないと何もわからないと思い、会うことを決めた。夜遅くまで営業しているカフェで集合することになった。
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