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そして――放課後になる頃には、私は咳き込んだ。喉が痛い。
朝、ロビンに貰った蜂蜜の飴を舐める。少し喉が楽になった。
急いで帰宅すると、ロビンが待ち構えていて、手には体温計を持っていた。
なんてタイミングが良いのだろう。
「お嬢様、こちらへ。大丈夫ですか?」
「風邪をひいたみたいなの」
「朝のお顔を拝見した時点で、存じております。お嬢様は風邪をひくと、何故なのかつむじの上の髪の毛がはねるからです」
「え? 嘘?」
「嘘です。さぁ、熱を測ってください」
無駄な嘘に騙されて、なんとなく悔しくなりながら熱を測った。すると、水銀の体温計が38の線まで移動した。高熱だ。それを見ただけで、私は一気に具合が悪くなった。自室の寝台まで支えて連れて行ってもらった。そして私は横になった。隣ではロビンが、手際良く氷の用意をしてくれている。
それから薬を飲み、頭に氷を当て、私はラベンダーの刺繍が綺麗な毛布をかぶった。
するとロビンが言った。
「何かご所望のものはございますか?」
「ロビンの作ったお粥が食べたいわ」
お粥というのは、隣国から広まった病人食である。私の言葉に、ゆっくりとロビンが頷いた。
「シェフではなく、私のお粥ですか」
「ええ。ロビンのお粥が好きなのです」
ロビンは何も言わずに出て行った。そして少しすると、お粥を持って戻ってきた。
私の隣に椅子を用意し、ロビンが座る。
食欲はあまりなかったが、食べておこうと決意して、私は早速起き上がった。
息を吹きかけて冷ましてから、ロビンが私にお粥の乗る匙を差し出した。
食べさせてもらうのは子供のようだが、手に力が入らないので仕方がない。
しばらくそうしていて――丁度食べ終わった時、ロビンが呟いた。
「私と一緒にいて下さる限り、お嬢様の望みをなんでも叶えて差し上げますよ」
「それは、ロビンが私の好きな食べ物をいつでも作ってくれるということかしら?」
「――好きなものを、食べ物以外にも、もっと沢山増やして差し上げることもできます」
「例えば?」
「そうですね。私の腕の温もりなど、いかがでしょうか?」
そう言って微苦笑すると、ロビンが私の髪を撫でた。
そして眼鏡を外してから、私の額に彼の額をコツンと当てた。
「まだまだ熱が下がる気配はありませんね」
唇が触れ合いそうな距離で、まじまじと覗き込まれる。
ドキリとした。
「おやすみなさいませ、お嬢様。失礼致します」
それからロビンは、私に毛布をかけなおすと、空になった食器を手に出て行った。
私は早く治そうと考えながら、目を閉じた。
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